ある日、スポーツセンターの職員の方が怒鳴り声をあげていてびっくりしました。
「あなたのような人はいなくていいから出て行ってください!」
事情をお聞きしてみたところ支援物資の水を1箱も勝手に自分の車に持って行ったそうでした。
当時いろいろなところから支援物資の援助がありスポーツセンターには結構な量の食べ物や古着やその他日用品が置いてありました。食べ物は職員室の前に置いてあって、他のものは2階に置いてありました。
必要なものを職員に話して職員から受け取るというのがルールでした。
ある時はやはり小さな子供のいる若いお母さんがこそこそとカップラーメンを1箱ごっそり持って行きました。
たまたま自分はそれを見ていてびっくりしました。
今の若い人は譲り合いの気持ちがないのかなと思ってしまいました。
確かにみんな少しでも多くの食べ物を確保しておきたかったのだと思います。
家族がいれば家族のことを守りたいという気持ちも理解できます。
でも他の人の事も考えなかったのでしょうか?
不安で苦しいのはあそこにいた人みんな同じだったはずです。ほとんどの人がマナーよく過ごしていたのになぜ一部の人はそのような行動に走ってしまったのでしょうか?
それにスポーツセンターではちゃんと3度のご飯を提供してくれていてどこよりも待遇はよかったはずです。そんなに貪欲に食べ物を集める必要もなかったはずです。
スポーツセンターでは掃除当番が決められていました。
合宿する学生も掃除はしていたそうです。
そこでやはりみんな嫌がるのはトイレ掃除です。
率先して掃除する人はいません。
結果自分たちが2階の南側の当番になりました。もう1家族と交代のはずでした。
しかし・・・
もう片方の家族はほとんど掃除しませんでした。掃除してもただほうきではくだけでした。
人の事を責めるつもりはありません。
きっと自分も知らないうちに他の人に嫌な思いをさせた事もあったかもしれません。
でも、以前から自分は大変な時こそ本当の自分が出るのだからそういう時こそしっかりしないといけないと自分に言い聞かせてきました。それが自分の信条でした。
地震発生後もずっとそう決意してきました。だからこれだけは言えます。
自分たちの当番の時は、きちんと床も便器も雑巾がけをし柄のついたブラシで中もきれいにしました。
本当は自分だってトイレ掃除なんてしたくありませんでしたが、施設にただで置いてもらっているのだから、ご飯だって食べさせてもらっているのだからと精一杯掃除をしたつもりです。
普段は見えない事でもふとした時にその人の本当の姿がわかるものだと思います。
完全な人はいません。つい我先にと思ってしまいます。それはみんな同じだと思います。
きっとそれを克服するのは他の人への思いやりの気持ちや感謝の気持ち、それに自制心だと思います。
自分だって家族には嫌な思いをさせた事もたくさんあると思います。家族だとつい遠慮なしに文句を言ってしまいます。
でも、いつでも人の心の痛みを理解できる穏やかな気持ちを持った人に自分はなりたいです。
つづく