それでも やはり人間なのです

ボクは東電もそこの社員も嫌いです。

昔からそうなのですが、地元にいる時も東電で働いている人たちはエリート気取りで若者も軒並みいい車に乗っていました。
その多くが通勤時間ともなると狭い町道であるにもかかわらずかなりのスピードをあげていました。
そうして小さな町なのに朝と晩に大渋滞を引き起こします。

結果的には富岡町は事故の多い街になっていました。それは紛れもない事実です。

今だって東電にはいろいろな不満や憤りがあります。

まずやっている事が常識はずれです。
自分たちは高い給料をもらっておきながら、今回の事故の賠償をめぐっても国から支援を受けています。
しかも電気料金を値上げするなどもってのほかです。

最近は賠償のことで電話をしてもとても事務的です。

「このたびは大変ご迷惑をおかけしております」と機械のような声が聞こえます。

こっちは、わからない事があるので電話をしているのに対応している人もあまり賠償について内容を理解していません。
何かにつけて「ちょっと待ってください」「ちょっと待ってください」何度も電話は保留になります。
詳しく聞いてみるとその度に上司に相談しているようです。

また、熊本県のコールセンターが対応していたりします。

申し訳ありませんが、熊本県の東電関係の人に福島県民の気持ちがわかると思いますか?
少なくとも東北の東電関係者であるなら少しはいいのではないかと思います。
事務的なのも納得してしまいます。

そして何度も何度も住所や名前や「申し出番号」を聞かれます。
違う部署に回されてもそのたびに何度も何度も。

東電には東電の事情があるのでしょうが、はっきり言って鬱陶しいです。

でも・・・  東電社員も人間なのです。

犠牲者からすれば怒り心頭なのですが、やはり人間なんです・・・

震災のあった2011年も年末になっていた12月のある日。警戒区域の自宅からMR2を持ち出すときのこと。

持ち出す途中の警戒区域内で突然エンジンルームから煙がでました。そしてエンジンは止まりどんどん速度は落ちていきます。

もう駄目だ・・・

そう思いました。

車を降りてエンジンルームをのぞきこみます。
MR2はミッドシップエンジンなので車体後方がエンジンルームです。

確かに煙が出ています。

再びキーをひねっても全く反応しません。

原因はいくつか考えられました。
エンジンが駄目になってしまったのか?それともダイナモなのか?メインヒューズ切れか?

一時帰宅の際と同じように車持ち出しの際にも国からトランシーバーをもたされていました。
何かあったら連絡するようにと事前に説明されていました。
立ち入り受付を行っていた広野町の体育館にはJAFも待機しているはずでした。

ボクはトランシーバーにむかって「もしもし、もしもし」「富岡町の猫之介です!」と話しました。

反応なし・・・

えー!壊れていました!
そんなことありますか!前代未聞です!

頭まで白い防護服をかぶりマスクをして目だけ出して、国道をあたふたあたふたしていると警察が来ました。

「大丈夫ですか?」
「車が突然動かなくなってしまって、トランシーバーもつながらなくて」

警察の方が試してもやはりトランシーバーは応答なし。使い方が悪いとかそのレベルではありませんでした。

本当に壊れているようでした。

「連絡をとってあげます」と警察の方が無線で広野町に連絡を取ってくれました。

数十分後JAFが来ました。

「突然動かなくなりました。エンジンかメインヒューズかダイナモなのでスターターパックをつないでみてください」

スターターパックをつなぐとエンジンがかかりました。

よかった!エンジンの故障ではありませんでした。ダイナモでした。愛車はまだ走ります!

「これ(スターターパック)をつないで走れば広野くらいは持つから」

こうして警戒区域を後にしました。

無事に広野町の体育館に着き、どこか近くの自動車修理工場にレッカー移動することになりました。

MR2は少し特殊な車なので、本当はディーラーがよかったのですがいわきのディーラーに電話したところ警戒区域から持ち出した車は受け付けないという事でした。

それで震災前に夜の森で営業していたある自動車修理工場が四倉で再開しているということでしたのでそこに修理を頼むことにしました。

修理工場の人が来るまでに駐車場にいた東電社員の方が声をかけてくれました。

「大丈夫ですか?これはRX-7じゃないですか?」
ムッときました「MR2です!」

「あっ、そーだねー」と

それから励ましてくれて、しだいに心もほぐれ話がはずみました。

あー、東電の人もやっぱり人間。みんな悪い人ではないのだなーと初めて感じました。

名前を聞いておけばよかった。少し歳のいった人でとてもいい人でした。

搬送車に乗せる時もMR2を押してくれたり助けてくれました。

ありがとう

それからはなるべく東電社員と話す際もまず「東電の人でもいい人もいるのだから」と自分に言い聞かせます。

でも、つい、カツとなってしまう事があるのも事実です。

「罪を憎んで人を憎まず」

そんな言葉が頭をよぎります。

 

 

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