人間の光と影ー光(1)

夜遅くなってはいましたが、今市青少年スポーツセンターに到着し、部屋に案内されました。

施設内は消灯時間を過ぎて暗くなっていました。

相部屋だということでしたが、もう寝ているかもしれないと言われました。

部屋に入ると体が大きくて一見少し怖そうな人が立っていました。

その方のご夫婦と相部屋になるそうです。

一気にお先真っ暗に思えました。

少し話してみると隣町の方だということがわかりました。

その方もねこを数匹飼っているということでした。

一緒に連れてきた唯一の猫、アメショーさんはどうしたかというと。

残念ながらスポーツセンターでは動物は部屋に入れてはいけないということでした。

それで車の中で飼うことになりました。

夜はまだ寒い時期でしたので車の後ろの方に毛布を敷いて、カイロをたくさんおいてあげました。カイロはたくさん消費しました。

それでも風邪になったこともありました。

1度とてもこじらせてしまったので施設の人に場所を聞いて近くの動物病院につれて行きました。

注射を打ってもらい、薬ももらってきました。

獣医の方と雑談していて自分たちが避難者であることを話したところ、治療費は一切いらないということでした。

本当に心やさしい獣医さんでした。お金はどうしても受け取ってくれません。

それでその日はお礼を言って帰ってきました。

そのかわり後日ほんの気持ちばかりですが商品券を買ってご家族の方においてきました。

母は夜こそは部屋で寝ていましたが、昼間はずっと車でアメショーさんのお世話をしていました。

車はもはやペットの小屋になってしまい、かなり臭うようになってもいました。

相部屋のかたも同じで、夫婦で交代づつ車に行ってねこのお世話をしていました。

その方は夜も日替わり交代でねこのお世話をしていました。

一見怖そうな相部屋の方でしたが、実は公務員で優しい方であることがだんだんわかってきました。

その後、数週間は一緒にすごしましたが、早々と仕事に復帰されるために施設を出て行きました。

自分たちが置いていかれたようにも感じ少しさびしくなりました。

またそれは、これから先のめどがついたということでしょうからお先真っ暗な自分たちが情けなくもなってしまいました。

さてスポーツセンターに入った次の日いろいろと説明を受けました。

なんと泊まるところを提供するだけでなく3度のご飯を提供してくださるということでした!

それが日替わりでしたし、施設で働く料理人の手作りでした。

おいしいし、量もあるし、健康のことも考えられたすばらしいご飯でした。

最近はずっとまともなものを食べていなかったのですごく感謝しました。

本来は学生たちが合宿のために使っている施設なので、同じメニューを出しているということでした。

近所の人からの差し入れもありました。お菓子、ご飯、つけものなど。

本当に感謝でした。

多いときで何人泊まっていたでしょうか?

100人くらいいたでしょうか?

結局みんな1月半くらいいたのですが、そうした避難者のための食費やら生活費はどこから出ていたと思いますか?

施設ではクーラーがありませんでしたし、少し古くなっていたので改修するためにお金を貯めていたそうです。

そのための設計もすでにすんでいたということでした。

その貯めていた改修費用をすべて避難者のために使ったということでした。

さらに、避難者がいるために他の利用者を受け入れることはできないので、収入もなく出費がたいへんだと言っていました。

確か県の施設とはいえそこまで避難者のためにする義務は本来ありません。

すべて所長さんの厚意でした。「ここでお金を使わないでいつ使うのか」と言っていました。

世の中にはこういう人もいるのだなと思いました。

最近は人を刺しただの、ドラム缶に死体を入れて海に捨てただの、満員電車で女性に触っただの嫌なニュースや馬鹿馬鹿しくなるニュースも多いです。

いじめの問題も心痛みます。

でもそのとき、まだまだ人間捨てたものではないのだなと思いました。

今回は本当に大勢の人に助けられました。

今の自分たちがいるのも多くの人の支えによります。

被災者という特に心細くなりがちな状況で人の温かさは通常にも増して自分たちを元気づけました。

親切にしてくれた当人はなんでもないと思うことでも不安な気持ちになっている人には元気の源になることも多いのです。

たった1杯のお茶でも、少しの励ましの言葉でも心に響く場合があるのです。

自分がこんどは何か人のためにしてあげられることがあったならば人の役に立ちたいと考えました。

今回お世話になった人に直接恩返しをすることはできなくとも他の困っている人のために。

つづく

 

 

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