もう1年ほど前のこと。
今は辞めましたが、ある派遣会社に就職が決まり、研修で名古屋に行きました。
あまり自分は被災者であることは話しません。
でもその時、ふとした事で同じく研修に来ていた人に自分が原発災害で避難していることを話しました。
「福島県の原発事故は全然進展なんかしていないんです。多くの人は避難したままなんです。決して風化させてはいけないと思います」と話しました。
そしたら、「実際は風化していて、ほとんどの人は全然感心なんて持ってないのが現実じゃない」と返ってきました。
確かにそうかもしれません。当事者でないと原発事故になんて、もう感心なんてないのかもしれません。
それが現実なのかもしれません。
ただ、その心無い言葉に内心怒りを感じました。
双葉郡の多くの人が狭い仮設住宅で、しかも家族単位で生活しています。
機会があったら仮設住宅の中をのぞいてみてください。
狭く、プライバシーなんてあったものではありません。
最近は雨漏りが生じて畳にカビが生えてしまい、肺を菌に侵されている人も増えていると聞きます。
一度菌に侵されると一生治らないそうです。
原発事故がなかったらそんなこともなかったのです。
そして、自分の親類もストレスで心臓をやられたり、うつになっています。
でも、それが双葉郡の大勢の人が置かれている状態なのです。決して珍しいことではありません。
ボクや母は、わりと元気にうまくやっている方です。
ただ、運よく割と広い1軒屋に入居できたせいもあると思います。
また、ねこが結構かわいくて、気を紛らわせてくれているせいもあるのかもしれません。
私生活ではボクは職業訓練校に入って機械の勉強をしています。
仕事をしていたり、勉強していたりするとやはり生活に張り合いはでてきます。
避難生活がどんなに長引こうと、周りの人が無関心であろうと、決して負けてはいけない。
今 置かれているこのような状況でも、将来の自分のためにできることはきっと何かあるハズだ。
そう感じるこの頃です。
庭の除染も片づけも全く進展がなく、ガレキは積み上げられたままです。
水道もガスも出ません。
ネズミに配線をやられている可能性があるため、電気を点けることもできません。
床を拭いても拭いてもネズミに荒らさせます。
ネズミ捕りにかかったネズミは腐乱し、悪臭を放ちます。
ゴキブリの死骸も転がっています。
そして、家に帰って感じることはいつも同じ。
3年以上経ちますが、自分を取り巻く状況は相変わらず何も変わっていないように感じるだけです。
こんな現実を双葉郡以外の人はどれだけ知っていることか。
ごくまれに用事で東京にでかけることがあったとしても、見かけるのは、ただ何もないように忙しそうに足早に歩き去る人々の姿だけです。
当初は、果たしてこれは同じ日本なのかと、その現実にとても大きな違和感を感じていました。
そして、東電本社の経営陣のどれほどの人がこの現実を実際に見たことがあるのだろうか?
何も責任も罪悪感も感じないのだろうか?
疑問を持たざるを得ません。
辺りには人気がなく、閑散とした土地が広がっています。
今日は朝から小雨が降っていました。
なんとなく寂しげな秋の小雨は、気持ち的には、一層わびしさを助長させるだけでした。
数日前に、福島県知事選挙がありました。
私欲にまみれるだけの腐敗した政治家などには自分は何も期待していません。